ES&T 2007年1月3日
殺菌ナノ物質 法的検査が強化される
米初のナノ技術規制 間近か


情報源:Policy News - January 3, 2007
Antimicrobial nanomaterials meet increased regulatory scrutiny
The first federal restrictions on nanotechnology could be coming soon
http://pubs.acs.org/subscribe/journals/esthag-w/2007/jan/policy/kc_epa.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2007年1月4日


 米EPAは殺菌剤として銀イオンを使用する洗濯機は農薬として登録しなくてはならないと決定した。今まで、EPAは、生物蓄積性、難分解性及び有毒性を持つ金属からなる銀イオンはもとより、どのようなナノ物質も規制したことがなかった。しかし、EPAのこ決定は意味がないのではないかと批評家は指摘している。会社が、銀はバクテリアを殺すことができるとの主張を広告から取り下げれば、洗濯機を登録しなくてもよいからである。

 もし会社が、その製品はバクテリアを殺すことができると主張しなければ登録をすることなくEPAをやり過ごすことができるという事実は、”連邦政府の殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)の奇妙なところであり、一体どうなるのか興味がそそられる”とウッドロー・ウィルソン・国際センターの新規ナノ技術プロジェクトの科学顧問、アンドリュー・メイナードは述べている。彼やその他の人々はナノ技術の潜在的な環境・健康・安全リスクを早急に研究するよう要求している。

 11月に更新されたナノ技術消費者製品目録の評価で、同プロジェクトはナノ技術で作られた消費者製品の数は2006年3月以来、70%増加しているということを見いだした。最も広く使われているナノ物質は銀であり、現在47製品中に見いだされるとメイナードは述べている。

 廃水処理産業は特に、サムソンの洗濯機のような銀イオンを廃水処理系に放出する家庭製品の広範な使用は、廃水処理施設の排水口に大量の銀を濃縮させ、魚の生物蓄積や水生生物を殺すというような有害影響をもたらすと指摘していた。

 ”我々は、EPAがこのような使用を規制しようとしていることはすばらしと思う”とカリフォルニア州パロ・アルト市の環境遵守マネージャであり、カリフォルニア州の廃水処理プラントに影響を与える法的問題に関する技術諮問委員会Tri-TACの元議長フィル・ボベルは述べている。”しかし、この措置により銀を我々のシステムに入れないことができるのかどうか我々にはわからない。”

 サムソンの広告は、洗濯及びすすぎ中に放出されるナノスケール銀粒子は菌を99.9%殺し、残った銀が衣類の表面に付着し30日間さわやかな臭いをさせると主張している。EPAの科学者らは、これが洗濯機販売促進用の宣伝文句なのかどうか、あるいはこれが新奇な物質なのか確信を持っていない。銀はすでに多くの製品中で殺虫剤として規制されている。

 もし、サムソンがEPAに農薬の登録(FIFRA registration)を申請をすれば、EPAは銀イオンがどのような条件で使用されるのか検証するであろう。サムソンはそのナノスケール銀粒子の使用が不合理なリスクを人々又は環境に及ぼさないことを示す科学的データを提供しなくてはならない。

 その技術がナノ物質と関係があるということをEPAが知れば、多くの消費者製品に影響を与えることになるであろうとEPAの科学者らは述べた。

 従来、EPAは洗濯機を装置(device)として分類したが、そのことは殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)の下での登録対象とはならないということを意味していた。しかし、州や様々な産業から懸念の声が上がり、EPAはその製品を再評価した結果、昨年11月に、”銀イオンは農薬と定義されると決定され、したがって規制される必要がある”とEPAの報道官エルネスト・ジョーンズは述べている。”我々は、現時点ではそれがナノ物質であるかどうか知らないが、もしそうなら、アメリカで初のナノ技術の規制になるであろう。”

 ジョーンズはもしサムソンがその広告から殺菌剤の主張を取り下げれば、同社はその洗濯機を殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)の下で登録しなくてもよいと認めた。他の会社はすでに、そのナノ技術消費者製品の販売において殺菌効果の記述を削除すると述べている。昨年の11月に懸念をEPAに手紙で伝えた環境団体の天然資源防衛協議会(NRDC)によれば、銀ナノ粒子を埋め込んだソックスやスリッパ、食品容器を開発しているシェイパー・イメージ社がそのような会社の一つである。

 ”ナノスケール農薬成分を特定しないことが殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)登録要求の回避の理由になってはならない。ナノ銀は環境に深刻な害をもたらす可能性が十分にあるので、EPAは、ナノ銀を殺菌剤として使用している全ての製品の包括的な評価を実施すべきである”とNRDCはその手紙に書いている。

 ジョーンズによれば、EPAは今後2ヶ月で、銀イオン生成洗濯機の分類に関するEPAの見解を概説する官報告知を発表するであろう。

クリス・クリステン(KRIS CHRISTEN


訳注:参考記事


化学物質問題市民研究会
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